《CMデータ小噺》 第2話 性年代別配信「Demographic」の裏側 ~推理のヒントが豊富なAbemaTVの視聴データ~(前編)

話し手:阿部 昌利(阿部)

話し手:阿部 昌利(阿部)

株式会社AbemaTV データサイエンティスト

分析担当。データを扱うが感性重視で発言する

聞き手 篠塚 淑子(ヅカ)

聞き手 篠塚 淑子(ヅカ)

株式会社AbemaTV 経営管理局

広報担当の一児の母。舌鋒鋭い

AbemaTVの広告商品の1つに、指定の性年代区分のユーザーに配信する「Demographic」というCM配信メニューがあります。今回の記事では、その推定と配信の実態について、カジュアルなインタビュー形式で、前編・後編に分けてお伝えします。

1. 性年代別配信「Demographic」の仕組み

ヅカ

前回の記事の「データアナリストに、ド直球ストレートを投げていくスタイル」が評判だったので、引き続きど真ん中に投げ込んでいきたいと思います。よろしくお願いします

阿部

よかったです。インターネットテレビ局という新しいメディアの一員として、本連載も斬新な切り口で展開していきたいです。今日もよろしくお願いします

ヅカ

まず最初にどのように性年代別配信を行っているかを教えてください。なるべく分かりやすい表現でお願いします

阿部

任せてください。まず、AbemaTVは、地上波テレビと同様に、会員登録が不要なメディアのため、性別や年齢などの情報を取得していません

ヅカ

ですよね。開局当初「AbemaTVは、24時間編成・会員登録不要の神アプリ」という謳い文句もありました

阿部

そのため性年代別配信では、ユーザーごとに性別や年齢の推定を行って、その推定結果に基づいて、配信を行っています。番組本編からCMに入るときに、ユーザーを大きく5つのグループに分けて、そのグループごとに異なるCMを流します。5つのグループは、①男女22歳以下、②M1(男性20~34歳)、③F1(女性20~34歳)、④M2以上(男性35歳以上)、⑤F2以上(女性35歳以上)です

ヅカ

つまり、ユーザー自ら申告した情報ではなく、AbemaTV側が判定した「こちらのユーザーはF1」「あちらのユーザーはM2以上」という結果で、CMを出し分けるわけですか?

阿部

そうです。判定する仕組みをつくったという意味では、私が審判です

ヅカ

その判定を100%信じてよいですか?…と聞きたいところですが、先に仕組みの方を教えてもらいましょう

阿部

その質問来ると思っていました(笑)あとでお答えします。さて、さすがに正解の情報が全くないところから、ユーザーの性別や年齢を推定するのは大変なので、先にお手本を用意します

ヅカ

お手本とは?

阿部

一部のユーザーにアンケートを実施して、そのユーザーの回答を活用しています


(このようにアプリ内でアンケートを実施しています。ご協力頂いている皆さま、ありがとうございます)

阿部:アンケートの回答と視聴ログ(視聴した番組の情報)を組み合わせると、例えば10代のユーザーがたくさん見ている番組や、あるいは男性35歳以上の方がよく見ている番組というのがわかります。そして、アンケートを回答していないユーザーでも、仮にその番組を見ていたら、そのユーザーも同じような性別・年齢だろうという風に推定します

ヅカ:少しわかってきましたが、2つ質問があります。まず、1人のユーザーの推定に用いる番組というのはいくつくらいありますか?それから、番組ごとにそんなに性別や年齢が偏るものですか?

阿部:順番に答えます。まず推定の基となる番組数ですが、いくつというのは決まっておらず、期間で決めています。現在は、そのユーザーが直近2年間で見た番組のすべてを基に推定しています

2. 多チャンネル配信の思わぬ効用

ヅカ

なるほど、番組ごとの性年代の偏りに関してはいかがでしょうか?

阿部

AbemaTVは特定の性年代に偏りやすい番組が多いです。例えば、AbemaTVの番組の29%は、視聴者の8割以上が男性です

ヅカ

偏っているのが多いですね!例えば男性が多く見ているのは、どんな番組でしょう

阿部

こちらです

ヅカ

これは…女子会ではあまり話題にならなさそうな番組ですね

阿部

チャンネル全体を通じて、釣り、格闘、麻雀、将棋の視聴者は男性中心ですね。逆に女性が多い番組はこちらです

ヅカ

韓流・華流、恋愛系は女性が注目しやすいんですね。こちらの方が私としても見てみたくなります

阿部

逆に、男女が同じくらい視聴した番組だとこちらになります。世間的な話題に関する番組や、ニュース番組、地上波で人気を博した番組は、男女問わず見られやすいです

ヅカ

わかる気がします、新聞のテレビ欄にありそうなタイトルです

阿部

ええ。最初に挙げた視聴者層の偏りが大きい番組は、社内で「色のついた番組」と呼んだりします。そうした特定層の興味関心を集めやすい番組がAbemaTVには数多くあります。そのため、性年代の推定がしやすいのです。私自身、同様の案件を別のデータで手掛けたことはありますが、それに比較するとAbemaTVは精度を高めやすかったです

ヅカ

それは多チャンネル配信の思わぬ効用かもしれませんね

阿部

まさにそうです。AbemaTVが多方面に尖った番組をつくり続けているからこそです

ヅカ

こうしたデータ活用を通じて会社としての投資効果を高められるのは良いですね

>《CMデータ小噺》 第2話 性年代別配信「Demographic」の裏側 ~推理のヒントが豊富なAbemaTVの視聴データ~(後編)