旅行ブランド事例に見る“指名検索”獲得の重要性 ─予約に近づくほど絞られる“候補ブランド”に残るために

旅行ブランド事例に見る“指名検索”獲得の重要性 ─予約に近づくほど絞られる“候補ブランド”に残るために
小島 功(こじま こう)

小島 功(こじま こう)

株式会社AbemaTV 広告本部 プロダクトマーケティングスペシャリスト

2003年にサイバーエージェントに入社し「アメブロ」のデザイン制作やマネタイズ業務などに携わる。2016年より「AbemaTV」の広告商品開発や価値証明を担当し、2019年より広報業務も兼任。

みなさんは旅行予約をする際にどのようなプロセスを踏みますか? 当然、本人や周囲の旅慣れ度合い、あるいはネットリテラシーの違いなどによってカスタマージャーニーマップはさまざまかと思います。

旅行予約は、食品・飲料や日用品などと異なり、必ずしも一定頻度で発生するものではありません。何かをきっかけに突然“予約”フェーズに入ることもあれば情報収集といったプロセスを経て“予約“に至るケースもあり、いつ訪れるかわからないそのタイミングを捉え、“予約”を獲得するためのユーザーコンタクトをとることは非常に難しいものです。

「AbemaTV」では「旅行予約サービス」ブランドの広告配信実績が数多くありますが、今回は、訴求ブランドにおいて最終的に“予約”にまで至ったユーザーの分析から、その確率を上げるためのヒントとなる事例をご紹介したいと思います。

 

“指名検索”をKPIに設定

「旅行予約サービス」ブランドが“予約”を獲得するには、まず「旅行予約サービス」のWebサイトに訪問してもらわなくてはなりません。(実在店舗を持つブランドもありますが、今回はWeb集客を前提にした分析です。) 行き先名などの具体的な検索をしている時に偶然訪問に至るケースもありますが、“予約”獲得に向けてもっとも期待値が高く、適正な事前KPIには「旅行予約サービス」ブランド名の“指名検索”が想定されます。

そこでまずは、今回ご紹介する「旅行予約サービス」ブランドに対する“指名検索率”の変化についてログデータを追跡した[図1]をご覧ください。

 

 

訴求ブランドが「AbemaTV」への広告出稿を開始したのはテレビCMへの大量投下がちょうど終了したタイミングだったため、その時期は[広告非接触者(≒一般市況)]における競合間での“検索UU数シェア”が下がった時期でした。ただし、「AbemaTV」での[広告接触者]については同様にシェアが下がったものの、そのダウン値が大幅に抑制されており、広告接触が“指名検索ユーザー”獲得にある程度貢献できていたと言えます。

また、訴求ブランドに関する“1人あたりの検索回数”“総検索数のシェア”についてまとめたのが[図2]です。

 

 

[図2]のとおり、「AbemaTV」での[広告接触者][広告非接触者(≒一般市況)]に比べて“1人当たりの検索回数”が大幅にアップしており、その結果、それと“検索UU数”とを掛け合わせた“総検索数のシェア”も伸びる結果となりました。

 

“予約転換率”で見る─“指名検索”獲得の価値

次に、「AbemaTV」での広告接触によって生まれる強い“指名検索”が、その先の“予約”獲得の近道になるということを示唆するデータをご紹介します。

[図3]のグラフは、広告配信を開始した後の期間に“指名検索”行動を起こしたユーザーのうち、どれだけの人が“予約”まで到達したのか?(=予約転換率)を示したものです。

 

 

[図3]のとおり、「AbemaTV」の[広告接触かつ検索者][広告非接触(≒一般市況)かつ検索者]に比べて約2.5倍の“予約転換率”になっており、際立った成果が出ていることがわかります。

もちろんこれは、「AbemaTV」での[広告接触かつ検索者]のほうが“直近で旅行に行く意思のある人がただ多かったから”という単純な理由からではありません。先ほどの[図3]を、“半年以内に旅行に行く意思があったかどうか”という旅行予約に対する関与状況別にユーザーを分けて表したのが[図4]です。

 

 

“半年以内に旅行に行く意思があった”という関与度の高い検索者に絞った“予約転換率”で見ても[広告非接触(≒一般市況)かつ検索者]約2.7倍という結果でした。

つまり、「AbemaTV」での広告接触が引き起こす“指名検索”がいかにユーザーの意欲を一気に高めるものであったかがわかるデータであり、“予約”獲得に向けた近道は“モチベーションの高い指名検索”の獲得とも言えるでしょう。

では、そのような“指名検索”を獲得するために重要な中間指標は何でしょうか?

 

予約に近づくほど絞られる“候補ブランド”に残るために

[図5]は今回の「旅行予約サービス」ブランドの“第一純粋想起”のリフトアップ値を示したグラフです。[広告接触者]はもちろんのこと[広告接触かつ検索者]においては非常に高い確率で訴求ブランドが想起されていることがわかります。

 

 

ここで興味深いのは、[広告接触かつ検索者]の想起したブランドが、競合も含めてわずか5ブランドに絞られているということです。

これは、「旅行予約サービス」ブランドを指名検索するほど“予約”にかなり近づいているユーザーの中では、真っ先に想起するブランドが無意識のうちにある程度絞られていることを示しています。そしてこの現象は、今回の「旅行予約サービス」に限ったことではありません。検索などの検討プロセスを経て予約や購買に至るような商材であれば、いずれにとっても“指名検索”は高い価値があり、それに直結する“ユーザーに想起されるブランドであるかどうか”が重要指標の1つであることに疑う余地はありません。

さらに先ほどの“第一純粋想起”のリフトアップ値を、「AbemaTV」に対するユーザー評価別で分類したのが[図6]です。

 

 

③~⑥【メディアやコンテンツの品質】に対する評価、⑦~⑧【熱量の高いコンテンツ視聴体験】に対する評価、⑨~⑩【ストレスを抑えた広告設計】に対する評価を「AbemaTV」に対して持っている[広告接触者]の数値です。ご覧のとおり、[広告接触者全体]に比べて、“「AbemaTV」に何らかの評価をしている[広告接触者]のほうが“第一純粋想起”のリフトアップ値が高いことがわかります。

過去の記事でもお伝えしましたが、「AbemaTV」の広告視聴体験は以下のメディア方針が下支えしており、今後もそのこだわりを継続していくことによって、今回の“純粋想起”、そしてその先の“指名検索”を獲得し出稿ブランドに貢献する役割を一層果たしていけるメディアを引き続き目指したいと考えています。

  • ユーザーが安心してコンテンツを楽しめる、品質の高いメディアである。
  • 内容の面白さと同時視聴によって熱のこもったコンテンツ視聴体験を提供できる。
  • 視聴体験に水を差さないよう配慮した形で動画広告に接触させることができる。

 

最後に

いかがでしたでしょうか?

“指名検索”の獲得は簡単ではありませんが、予約や購買獲得の確率を上げる重要KPIであることは間違いありません。そして広告のクリエイティブの要素や配信フォーマットなどの工夫はそれを大きく左右するものになります。そのあたりの相関性なども今後分析していき、またこの場でご紹介していきたいと思います。

 

 

調査機関:楽天インサイト株式会社
調査対象者:15-69歳男女
調査期間:2019年11月
サンプルサイズ:[検索ログ]広告非接触者n=50,165、広告接触者n=3,421 [アンケート]広告非接触者n=500、広告接触者n=500