《CMデータ小噺》 第1話 輝けCMデータ、分析官が躍動する組織体制とマインドセット(後編)
話し手 阿部 昌利(阿部)
株式会社AbemaTV データサイエンティスト
分析担当。データを扱うが、感性重視で発言する
聞き手 篠塚 淑子(ヅカ)
株式会社AbemaTV 経営管理局
広報担当の一児の母。舌鋒鋭い
4.みんなが認める課題は、数値評価できるビジネス成果に捉われずに解く
ヅカ
ところで、阿部さんはデータ分析でビジネス成果を出せているんですか?
阿部
痛いところをつきますね。世の中のデータサイエンティストが苦労しやすいポイントだと思います。私は幸い、ここではターゲティング広告の商品開発などを通じて、クライアントさまや自社の役に立ってきたと思っています
ヅカ
ですよね。すみません、わかってて質問してみました。でもどうして今回の発表では、売上ベースの貢献度合いではなく、社内の表彰回数で成果をアピールしたんですか?
発表資料 p.5
(手前味噌な資料で申し訳ございません)
阿部
そうです。ここ、出そうと思ったら収益の〇〇%に貢献みたいな定量効果も出せたんですよ。そうしなかったのは、どうしてだと思います?
ヅカ
私が質問したのですが…
阿部
ごめんなさい。ここは、定性評価も大事だと主張したかったんです。データ分析の界隈では「数値評価できるビジネス成果」を追求する潮流があります。でもそうすると仕事がシュリンクしちゃう部分があると考えています
ヅカ
と言うと…?
阿部
例えば、この事例です
発表資料 p.41
阿部
この仕事は大事だったと思っています
ヅカ
クライアントさまにも信頼できる数字を提供できますしね
阿部
ええ。でもこれで実際に削減される時間はそこまで大きくなくて、金額換算しても限定的な数字になります。それよりも、責任者がその分の時間を有意義に使えることや、精神的負担をなくせることが大きかったと思うんです。そういう定性評価も含めた、データ分析の貢献のファクトになるのが、社内の表彰回数だと考えて提示したんです
ヅカ
そこまで考えていたんですね
阿部
意外と考えています。もちろん仕事の基本になるのは、ビジネスインパクトが目に見えて大きいプロジェクトです。ただ組織のボトルネックのように、みんなが認める明確な課題があって、それがデータ分析で解決すべき課題ならば、分野問わず積極的に取り組みます。そうした多方面の課題に取り組むためのテクニックも、今回の発表では紹介しています
5. データに感動する。データで感動させる
ヅカ
今回登壇してみて、この連載に活用できそうな発見はありましたか?
阿部
ありました。データ分析も、手触り感が大事ということです
ヅカ
もう少し詳しく聞かせてください
阿部
今回の目的は、同業者の方々へのヒントとして、私が試行錯誤した結果を伝えることでした。狙い通り、そこが参考になったという反応は一定数頂きましたが、最も多かったのは「データ分析という仕事の実態がわかった」という意見でした
ヅカ
意外ですね。どうしてでしょう?
阿部
僕の想像ですが、データサイエンティストという職業は定義が曖昧で、何をしている人たちなのか、わかったようでわかりません。プロジェクトを喧伝する記事や、キャリアに関する記事は、それなりの数が出回っています。でも、実際の仕事のアウトプット量と、アウトプットに伴うコミュニケーション量に関して、厚みをもって把握できる資料は意外と少ないように思います
ヅカ
今回の発表はその点を押さえていたので、予想外な角度から受け止められたと
阿部
はい、そう考えています。だから具体像というのは大事だと感じました。そしてデータ分析結果というのも同様に、抽象化するケースが多く、具体像を失いがちです。だからこそ分析結果が示す内容を、誰が見ても手触り感を得られるような形にしてアウトプットすることが大切なんだと、改めて認識しました
ヅカ
なるほど!では、この連載でも皆さんに分かりやすくアウトプットしていけると良いですね。
阿部
はい、励みます。私が掲げるモットーに「データに感動する、データで感動させる」というのがあります。感動が独りよがりにならないように、手触り感を大事にしていきますね!
ヅカ
次回のCMデータ小噺のインタビュー、楽しみにしています。ありがとうございました!
阿部
ありがとうございました!
本インタビュー記事の元となった発表スライドはこちらです
(次回のCA BASE CAMPは今秋予定です。ご来場お待ちしています!)