- Column
『7.2 新しい別の窓』 が創り出す“消費者を動かす広告”とは? ─番組の視聴熱が高める深いブランド関与効果
2019.12.23
小島 功(こじま こう)
株式会社AbemaTV ビジネスディベロップメント本部 プロダクトマーケティングスペシャリスト
2003年にサイバーエージェントに入社し「アメブロ」のデザイン制作やマネタイズ業務などに携わる。2016年より「ABEMA」の広告商品開発や価値証明を担当し、2019年より広報業務も兼任。
マーケティングにおいて、ターゲット層にはどんな特徴があるか、どんな訴求が刺さりやすいかを理解することは不可欠です。そこで今回は、身だしなみに関する「日用品」にフォーカスし、家庭内における日用品購入の銘柄決定権についての調査データを紐解いていきます。(文=小島功)
自分が使う日用品は自分でブランドを選びたいという10代が増えているようです。ビデオリサーチの調査データをもとに分析したところ、化粧水・美容液といった「基礎化粧品」やシャンプー・洗顔・整髪料といった「トイレタリー」など、身だしなみに関する項目を中心に“自分で使うものは自分でブランドを選定している”という10代がここ数年で増加しているようです。
<各商品カテゴリの値について>
■食品・飲料:13カテゴリ/41商品項目 の平均値 <カテゴリ>菓子(チョコレート、スナック菓子、アイスクリームなど)、炭酸飲料(コーラ・サイダー類)、チューインガム、口中清涼食品、清涼飲料水(水・お茶・紅茶など)、ペットボトル/紙タイプコーヒー飲料、果汁入りジュース、食料品(米・パンなど)、即席めん類、カップ入りめん類、食料品(調味料)、缶コーヒー、レトルト食品(カレー・スープなど)、トマトジュース・野菜ジュース、レギュラーコーヒー・インスタントコーヒー
■日用品(メイクアップ化粧品):1カテゴリ/6商品項目 の平均値 <カテゴリ>メイクアップ化粧品(ファンデーション・口紅など)
■日用品(基礎化粧品):1カテゴリ/6商品項目 の平均値 <カテゴリ>基礎化粧品(化粧水・美容液など)
■日用品(トイレタリー):3カテゴリ/11商品項目 の平均値 <カテゴリ>日用品(ハミガキ・シャンプー・洗顔料など)、ヘアスタイリング剤・整髪料、洗い流さないトリートメント
■日用品(洗剤など):1カテゴリ/6商品項目 の平均値 <カテゴリ>洗剤(食器・洗濯など)
■ヘルスケア:5カテゴリ/13商品項目 の平均値 <カテゴリ>目薬(洗眼薬を含む)、眼鏡・コンタクトレンズ、薬(風邪・胃腸・鼻炎など)、サプリメント・栄養補助食品、ドリンク剤・生活(体質)改善薬
■耐久財:7カテゴリ/20商品項目 の平均値 <カテゴリ>スマートフォン、腕時計、タブレット端末、オーディオ電化製品(テレビ・パソコン・プリンターなど)、携帯電話(スマートフォンを除く)、家電(洗濯機、冷蔵庫、掃除機など)、自家用乗用車
※参照データ:株式会社ビデオリサーチ「ACR/ex」2018年度4-6月調査・2022年度4-6月調査(いずれも東京50km圏データ)、調査対象:男女15~19歳、サンプル数:2018年 n=718 2022年 n=715
また、日常意識に関する調査でも“身だしなみに関して気を配っている”という10代の割合が明らかに増えていることを示すデータがあり、ブランド選定行動の高まりの裏にはこういった意識の変化があるようです。
※参照データ:株式会社ビデオリサーチ「ACR/ex」2020年度4-6月調査・2022年度4-6月調査(いずれも東京50km圏データ)、調査対象:男女15~19歳、サンプル数:2020年 n=748 2022年 n=715
このような意識変化は、10代の育ってきた環境も要因の1つではないかと思われます。インターネットメディア等を通じて同世代の活躍を目にしたり自己表現したりする機会が多い「Z世代」は身だしなみに対する意識がもともと高まりやすい環境にあるなかで、とりわけ令和時代の10代は検索や決済の手段がより進化し主体的に行動しやすい環境がますます進んでいると考えられ、そういった環境の変化がブランド選定意欲を高める後押しとなっているのかもしれません。
ちなみに、子どもを持つ親側の認識からも同様の傾向がみられるのでしょうか?中学生以上の子どもを持つF1・F2を対象に「ABEMA」で調査を実施したところ、日用品の銘柄選択に子どもの意見を取り入れていると回答した人が過半数を占める結果となりました。
※調査機関:ABEMAサーベイ、調査対象:中学生以上の子どもを持つF1-2、サンプル数:F1 n=110 F2 n=227、調査期間:2023年7月27日~8月2日
※調査機関:ABEMAサーベイ、調査対象:中学生以上の子どもを持つF1-2、サンプル数:F1 n=72 F2 n=126、調査期間:2023年7月27日~8月2日
コロナ禍の影響で家族間の会話が増えたことも背景として考えられますが、いずれにしても親が決めたものを子どもがそのまま使う時代ではなくなってきているという流れはありそうです。もし家族内における“銘柄決定権の分散化”が今後も進行していくとすれば、日用品の広告において10代へのリーチはますます重要になっていくでしょう。
身だしなみに関するものを“自分でブランド選定している”10代の特性をさらに探るべく、視聴メディア別のデータをみていくと、「ABEMA」を視聴している10代においてその傾向が強いという結果がみられました。これにはいったいどのような理由が考えられるでしょうか?
※参照データ:株式会社every sync・株式会社ビデオリサーチ「esXMP」、調査対象:男女15~19歳、対象者抽出期間:2023年5月1日~2023年5月31日、各メディアの利用者の定義:2023年5月1日~2023年5月31日の間にABEMA・競合B社・競合C社は1回以上 地上波は地上波民放に1分以上接触した方、サンプル数:ABEMA利用者 n=87 競合B社利用者 n=93 競合C社利用者 n=370 地上波利用者 n=336
その手掛かりの1つとして、10代を対象に「ABEMA」が実施した調査結果を紹介したいと思います。このデータでは、「ABEMA」を視聴している10代は視聴していない10代に比べて身だしなみ感度が高いことを示す結果となっていたのですが、興味深いのは、その高さを押し上げていたのが「恋愛番組」と「韓流・K-POP」の2つのジャンルを視聴する10代だったということです。
※調査機関:株式会社マクロミル、調査対象:15~19歳女性、サンプル数:ABEMA非視聴者 n=206 ABEMA全視聴者 n=309 恋愛番組視聴者 n=149 韓流・K-POP視聴者 n=96 アニメ視聴者 n=87、調査期間:2019年7月
この結果は、「恋愛番組」や「韓流・K-POP」のような同世代の活躍を多く目にするジャンルは“身だしなみ感度の高い”10代を惹きつけやすい、ということを示唆している可能性があります。言い換えれば、“身だしなみ感度の高い”10代に効率よくリーチしたい場合、このような視聴者特性を意識したジャンルマーケティングは1つの施策として検討しても良いかもしれません。
今回は身だしなみに関する日用品にフォーカスしましたが、情報収集や決済方法などの進化がますます進むにつれ、今後あらゆる商品項目において“銘柄決定権の分散化”が進んでいく可能性もあります。そういった購買環境の変化を敏感に捉え、それに対するマーケティング対策を今からイメージしておくと良いでしょう。