LabABEMAに関するコラムや調査レポート

「OTT × スポーツ視聴」が切り開く新しいスポーツマーケティングのカタチと可能性

「OTT × スポーツ視聴」が切り開く新しいスポーツマーケティングのカタチと可能性
岡村 立輝

岡村 立輝

株式会社AbemaTV

ビジネスディベロップメント本部 営業局 プランナー
2022年4月サイバーエージェントに新卒入社。株式会社AbemaTVに出向し、1年目からFIFAワールドカップカタール2022の大型プロジェクトのメンバーに参画。現在は「ABEMA」のセールス部門にて大手企業を中心とした動画広告のプランナーを務める。

井澤 正道

井澤 正道

株式会社電通デジタル

Dentsu Digital Global Center メディアプランナー
2022年に電通デジタルに参画。大手グローバル企業を中心としたマーケティング支援に従事。メディアプランニング・ディレクション業務を担当する。

かつて地上波で無料視聴するのが当たり前だったスポーツ中継。だが、視聴環境やコンテンツの多様化などにより有料を含むOTT(動画配信サービス)を通じた視聴も一般的になってきた。そうした中でスポーツマーケティングのあり方も大きく変わってきている。なぜ、OTTを通じたスポーツマーケティングが拡大しているのか?OTT/コネクテッドTVマーケットをリードする電通デジタルの井澤正道氏とスポーツの“無料視聴”に注力する「ABEMA」の岡村立輝氏が、“OTT×スポーツマーケティング”の未来について語った。

 

なぜOTT×スポーツマーケティングの組み合わせなのか

 

——そもそも、なぜ今「スポーツ」と「スポーツマーケティング」に注力するのでしょうか?

株式会社AbemaTV・岡村立輝氏(以下、岡村):「新しい未来のテレビ」をコンセプトとする「ABEMA」は「無料視聴」もひとつの重要な価値提供ととらえています。

昨今、OTTを通じた有料でのスポーツ視聴も台頭するなか、無料でのスポーツ視聴機会は減少傾向にあります。その中で、スポーツ離れを防ぎ、ライト層も含めた新たなスポーツファンを生むためのきっかけづくりとして、「ABEMA」の無料中継を通じてスポーツ産業の中長期的な発展に寄与できればと考えています。同時に、「ABEMA」でスポーツを無料視聴することは、広告主に対する“新しいスポーツマーケティングの場”を提供する可能性も秘めていると感じています。

 

株式会社電通デジタル・井澤正道氏(以下、井澤):サッカーW杯はわかりやすい例ですが、やはりスポーツは世界中の人々から注目を集めるコンテンツ。その“瞬間”を捉えて広告を配信することでマーケティング観点から大きな効果が期待できます。これが注力している理由です。また、“MLBの大谷翔平選手”のように、日本人選手の活躍によってさらなるシナジー効果も見込め、クライアントに対して注目度の高さを訴求できる点も非常に大きいです。

 

カギは “無料視聴による規模拡大”と“広告体験の設計”

 

——今は有料・無料を問わずOTTでスポーツ観戦することが一般化してきています。そうした中でOTTを活用したスポーツマーケティングがより拡大し、成功するためには何が必要だと思いますか?

 

岡村:まずは長期的にスポーツマーケティングの場を提供すること。そして、より多くの人々へ届けるには「無料視聴」がカギになります。メディア視点で考えるとスポーツ=没入感の高いコンテンツなので、それを阻害しないように広告を伝えていく視点も大切ですから、CM枠だけでなく、スポーツ視聴体験に沿った「広告体験の設計」が重要になってくると思います。

井澤:広告の効果を高めるためにも、広告そのものをより格好よく見せるアプローチも大事ですよね。サッカーや野球などのコンテンツに合った広告(クリエイティブ)を出して、ポジティブなイメージを持ってもらうこと。

やはり人は好きなスポーツを観ている時は、熱中している状態になると思います。スポーツコンテンツに没入体験にある中で広告を出すと、自分の記憶に残るものになる。マーケティングコミュニケーションにおいて“スポーツコンテンツならではの大きな価値”だと考えています。

 

W杯とMLBで理想をいち早く具現化した「Volkswagen」の“新しい体験”

 

——その意味では、W杯・MLB中継を活用した「Volkswagen」の事例もあげられると思います。「ABEMA」のスポーツ中継を活用したきっかけは?

 

井澤:きっかけは「FIFAワールドカップカタール2022」です。注目度が極めて高い点、欧州の自動車メーカーならではということもあり、グローバルなスポーツコンテンツとの親和性もあり広告配信をしました。その結果を見て、MLBやプレミアリーグにも出稿していこうという流れになりました。

 

岡村:井澤さんがおっしゃった通りW杯を「ABEMA」で放送したことが大きなきっかけとなりました。加えて、「ABEMA」では大谷翔平選手や三笘薫選手のように、日本の視聴者が注目する日本を代表する選手が出ているコンテンツを提供しており、その価値を評価していただけたことも大きいです。その中でVolkswagenとの事例では、視聴しているスポーツコンテンツと広告をどうシームレスに届けるかという課題と向き合いながら、新しい広告フォーマットにチャレンジさせていただきました。

 

——Volkswagenの例では実際どのような反応がありましたか?

 

井澤:ちょうどW杯の時期がVolkswagenの電気自動車モデル「ID.4」の国内ローンチと重なり、新しい電気自動車の認知・注目度を上げていきたい中で多数の試合に配信したのですが、実績はもちろん、クライアントや販売店、Volkswagenユーザーの方からも「ID.4の広告、見ましたよ!」という反響が多く寄せられました。そうした数字以外のインパクトでも高く評価してもらえました。

また、「ABEMA」が国内OTT史上初となるスプリットスクリーン型の広告「ABEMA Live Screen Ad」を提供開始して以降、Volkswagenが最初に実施したのですが、その点も画期的だったと思っています。

——今の話ともリンクしますが、これまでの2年間で実施した新しい施策やチャレンジ、具体的にはどういったものがあるのでしょうか?

 

岡村:最も大きなトピックはやはり「ABEMA Live Screen Ad」を実施させていただいたことですが、この他にも、MLBでは中継のスタジオで野球ファンに馴染みのある出演者が登場する、新型「T-Roc」の紹介コンテンツ(インフォマーシャル)を展開しました。いずれもスポーツ中継に特化したフォーマットで紹介することで、視聴者に違和感なく広告をお届けすることができた新しい事例だと思っています。

また今年は、「プレミアリーグ2023-24シーズン」を含む海外サッカーを「ABEMA」内で盛り上げるスペシャルウィークのイベントを、Volkswagenのタイトルスポンサーで初めて展開するなど、「ABEMA」として挑戦していきたいスポーツにおけるマーケティング施策に、常に二人三脚で取り組むことができました。

 

井澤:そうですね。岡村さんの言う通り、実際にターゲットユーザーとなり得るファンに向けて、違和感ない形でクルマの機能性を伝えられたことが価値だと思っています。クルマの購買層は比較的年齢が高いので、そうした層の認知を獲得しつつも、若年層の認知も得たいということで、例えばゴルフの番組コンテンツに広告を出すのか、大相撲などの番組コンテンツで出すのかといった選択肢を、ターゲットに応じて選べることも「ABEMA」ならではですよね。

 

「ABEMA」で放送されるゴルフ大会に協賛した事例では、ツアー会場で車両を展示したり、パブリックビューイング会場でのサイネージへの広告掲載などの取り組みもさせていただきましたが、オンラインとオフラインを組み合わせた立体的なアプローチができたことも大きいです。

——特に満足度が高かった部分、得られた知見などは何でしょうか?

 

井澤:満足度のところであえてどれか事例をあげるなら、やはりW杯です。4年に1度のビッグイベントですが、その後のプレミアリーグやMLBといった定常スポーツコンテンツの中で、どのように注目度を上げていくのか?この命題に対して、単に広告を掲載するだけではなく、「ABEMA Live Screen Ad」のような新しい広告フォーマットを活用して配信するなどの挑戦を通じて、熱狂的な視聴ユーザーとスポーツコンテンツ、コンテンツに最適な広告フォーマットが生む相乗効果によって、広告効果そのものを上げることができるという知見が得られたと思っています。

 

岡村:「ABEMA」ではCM放映だけでなく、視聴者との様々なタッチポイントを設計しマーケティングに活用してもらえるという強みがあります。Volkswagenと一緒に、そのタイミングごとに番組やモーメントに合う車種を通じて、継続的にユーザーとのコミュニケーションを図ることができました。こうした施策で、訴求物=車種の認知を向上できた点も価値があったと考えているので、引き続き取り組んでいきたいと思っています。

——今後、OTT×スポーツマーケティングはどこまで、どのように成長していくと考えていますか?

 

井澤:広告はメッセージがどこまで伝わっているかが価値。それを可視化できる点がデジタル広告の強みだと思います。すでにサッカーや野球などのメジャースポーツでの実績はありますが、それら以外にも様々なスポーツコンテンツが出てきている中で、どのような視聴者層と親和性があるか。その広がり(ターゲットリーチ)や可能性にも期待しています。

 

また、個人的にも海外サッカーファンなので毎週欠かさずプレミアリーグを視聴しているのですが、例えば野球のように年間100試合以上を定期的に観られるコンテンツは、スポーツ以外そうないですよね。そこに広告が掲載される。そうした背景からもスポーツマーケティングは今後さらに発展すると思っています。

 

岡村:OTTおよびコネクテッドTVは今後も視聴者数・ユーザー数ともに増加し、スポーツ視聴を楽しむ人も増えていくと思います。また、OTTは新しい広告フォーマットや新しい訴求の仕方にチャレンジしやすいプラットフォームでもあります。

 

OTTでのスポーツ視聴が定着していく中で、新たなユーザーコミュニケーションをクライアント/広告会社と連携させていただき、クライアント/ユーザーにとっても意味のあるマーケティングにチャレンジできる場としてご活用いただきたいと思います。また、常に弊社を含めたOTTメディアが新しいチャレンジをしていくことで、OTT×スポーツマーケティングの可能性は引き続き広がり続けていくのではないかと考えております。

 

それから最近は日本人選手のグローバルな活躍が非常に目立つようになってきていますよね。大谷翔平選手を筆頭に、野球=日本のプロ野球だった自分の幼少期を思えば、メディアの取り扱いや視聴環境も大きく変わってきています。

 

私自身スポーツビジネスがやりたくて入社しましたが、「ABEMA」としては「無料視聴できるエントリーメディア」の価値を通じて、スポーツファンの活性化やスポーツ産業全体を盛り上げたいという想いがあるので、代理店やクライアントの皆さんと一緒に、その一助となるメディアにしていきたいと思っています。

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