- Column
番組と企業のコラボCM事例 ~すでにファンのいるコンテンツの力を活用する価値とは?~
2019.07.26
小島 功(こじま こう)
株式会社AbemaTV 広告本部 プロダクトマーケティングスペシャリスト
2003年にサイバーエージェントに入社し「アメブロ」のデザイン制作やマネタイズ業務などに携わる。2016年より「AbemaTV」の広告商品開発や価値証明を担当し、2019年より広報業務も兼任。
「最近忙しすぎてとても恋愛モードにはなれないなあ。」
「今日は無性に焼き肉が食べたいモードなんだよねー。」
“モード”というワードがちょっと古いかもしれませんが(汗)、こういう会話ってありますよね。
私に時々訪れるのは「バジル」モードと「生姜」モードです。
どうでもいい発表はさておき、、、広告視聴においてもこのような“モード”は必ずあると思っています。
野球のナイター中継を見ているときに流れるビールのCMが「まさにそういう気分」っていう感覚。実際にはそこまで特に意識して見ないかもしれませんが、おそらくCMを“ものすごく受け入れやすい状態”であろう感覚のことです。
「AbemaTV」は幅広いジャンルの番組を完全編成で展開しているため、さまざまな“モード”が24時間365日絶え間なく発生している場であり、リニア放送の同時視聴による多くのコメント投稿によってそれが瞬間風速的にさらに助長される場面もあるでしょう。その“モード”を的確に捉え、広告戦略に活かすことは、「AbemaTV」独自の構造的特長による広告価値の創出につながります。
「モード」と広告効果の相関性が垣間見える事例を1つご紹介させてください。
人気アニメをモチーフにし「M2層」をメインターゲットにした男性向けゲームアプリ案件において、「広告で目にしたゲームアプリをプレイしたくなる“モード”になりやすいコンテンツはどのようなものなのか?」を調査するため、以下の3つのチャンネル群が今回のゲームアプリに対して“受け入れやすい状態”を作るコンテンツなのではないかという仮説を立て、分析を行いました。
[仮説]
CM配信後、広告接触によるリフトアップを“広告接触チャンネルグループ別”で比較したところ、「②競争モード系チャンネル」と「③2次元モード系チャンネル」での広告接触者が、全体に比べて大きくリフトアップしているという結果が見られました。「①戦略モード系チャンネル」の仮説は外れましたが、先述の2つについては全体の広告効果を大きく引き上げていることがわかります。
ちなみに、もともとゲームアプリの広告に興味がある(=“ポテンシャルのある”)人の割合と、広告がきっかけでゲームアプリをダウンロードすることがある(“=広告に影響を受けやすい”)人の割合を、普段視聴しているチャンネルグループ別に比べてみると、「競争モード系チャンネル」と「2次元モード系チャンネル」を普段視聴している人において差分が大きいことがわかります。
各チャンネル群において、「もともとゲームアプリの広告に興味があった人」と「広告きっかけでダウンロードすることがある人」の割合の差分が大きいということは、熱量が上がる可能性が高いユーザーが多く、それぞれの視聴モードがその熱量を作り出す可能性があると考えられます。
参考ですが、他の各チャンネルグループ視聴者における“広告に影響を受けやすい”人の割合を、業種ごとに比較してみました。
例えば冒頭で挙げた「ナイター中継にビール」の例ですが、広告がきっかけで「アルコール飲料」を購入することがある人の割合は、普段スポーツ系チャンネルを視聴している人において非常に高くなっています(①)。また、他にも以下の結果が出ています。
・広告がきっかけで「男性用化粧品」を購入することがある人の割合は、“こうなりたい”意欲が刺激されがちな「恋愛リアリティーショー」の視聴者において高い。(②)
・広告がきっかけで「家電製品」や「自動車」の購買行動を起こすことがある人の割合は、“音やビジュアルで空間を彩る”意欲が刺激されがちな「音楽系チャンネル」の視聴者において高い。(③)
・広告がきっかけで「住まい」や「旅行・テーマパーク」や「日用消費財」の購買行動を起こすことがある人の割合は、生活シーンが想起されがちな「ドラマ系チャンネル」の視聴者において高い。(④)
その他、「旅行・テーマパーク」や「日用消費財」の広告による購買行動が「スポーツ系チャンネル」の視聴者で高い(⑤)のは、前者は“体を動かしたい”意欲の刺激から、後者は“スポーツによるタフな汚れ”からの想起からなのか? など、想像・仮説はいろいろ尽きませんが、それらはコンテンツと受け入れられやすい広告との相性を左右する“視聴モード”の存在を感じさせる面白いデータであり、プランニングのヒントがそこに隠されていると思います。
いかがでしたでしょうか?
形は様々あるものの、視聴者の見たいコンテンツの間に広告を配信するというのはいわゆる“テッパン”の広告手法です。それがメインストリームである限り、ターゲットへのリーチ効率だけでなく、広告とコンテンツとの相性も含めた効果検証をすることは効果の最大化や効率化につながります。
幅広いジャンルかつ100%プロの手で制作された番組を展開し“テレビ”の良さと“デジタル”の良さを両方兼ね備えた「AbemaTV」なら、ブランドセーフティな環境でターゲットにリーチしつつ、相性のいいコンテンツを幅広く検証・発見しスピーディーにリプランをすることで効果の最大化や効率化を狙うことが可能です。
広告とコンテンツとの相性を加味したプランニングをすることの価値を探るために、今回は広告主の業種とコンテンツとの相性を考察しましたが、同じ業種の中でもブランドメッセージが違うと相性の良いコンテンツも違うのか?について、また次回以降にヒントを探ってみたいと思います。
余談ですが、“モード”という若干古めかしいワードをコラム内で恥ずかしいくらい連呼してしまいましたが、より洗練されたワードアイデアをお持ちの方がもしいらっしゃればぜひこっそり教えてください (汗)
調査機関:株式会社マクロミル
調査対象者:35-49歳男性
調査期間:2019年3月
サンプルサイズ:非接触者n=66/接触者n=246