- Column
旅行ブランド事例に見る“指名検索”獲得の重要性 ─予約に近づくほど絞られる“候補ブランド”に残るために
2020.02.06
小島 功(こじま こう)
株式会社AbemaTV 広告本部 プロダクトマーケティングスペシャリスト
2003年にサイバーエージェントに入社し「アメブロ」のデザイン制作やマネタイズ業務などに携わる。2016年より「AbemaTV」の広告商品開発や価値証明を担当し、2019年より広報業務も兼任。
広告は掲載先メディアの規模や特性、フォーマットなどから、メニューごとに最適な利用方法が定義され、出稿目的別におおまかに分類されて扱われていることが一般的です。わかりやすい例として、圧倒的な認知規模を獲得したい場合の「テレビCM」、ニーズが顕在化したユーザーを刈り取りたい場合の「検索連動型広告」などはみなさんもイメージしやすいのではないでしょうか。
そんな中で、「AbemaTV」はどのような目的でどのような層へ向けて広告出稿するのが最適なの? というご質問をいただくこともありますので、今回はそのヒントになるような検証事例を1つご紹介させてください。
「AbemaTV」にてCM配信をした携帯キャリアの事例をご紹介します。商材の特徴として、契約に至るまでに高い確率で[比較検討]のフェーズが存在するので、まず検索行動の変化についてログデータを用いて追跡しました。
[広告接触者]の訴求ブランドに関する検索率(つまり検索者の割合)が[広告非接触者(≒一般市況)]に比べてどのくらい増えたのか? それによって、携帯キャリア全体の検索UU数のうち、訴求ブランドのシェアが競合ブランドと比較してどう変わったのか? という2点を表したのが以下のグラフです。
[図1]のとおり、[広告接触者]の広告配信開始後の検索率や検索UU数のシェアが広告配信開始前に比べて高まっています。このことから、今回の広告接触が契約に至る前の“ロウワーファネル(顕在層)”へのプロセス進行に貢献できていることがわかります。
検索UU数に1人あたりの検索回数を掛けた総検索数のシェアは以下です。
「AbemaTV」でCM配信をしたことにより、訴求ブランドの総検索数シェアが、競合ブランドのシェアを奪う形で4.5%アップしました。その結果、[広告接触者]におけるシェアが1位に躍り出たのは非常に嬉しい事実です。
「AbemaTV」のCM配信は、冒頭に出た「検索連動型広告」のように“ニーズが顕在化したユーザー”ばかりに接触するわけではありません。さらに本案件の広告フォーマットは検索行動を直接推進できるようなクリッカブル型でもありません。その中でも、今回の検索行動のような“ロウワーファネル層(顕在層)”への移行を促せた要因は何でしょうか?
そのヒントを探るため、先ほどの検索行動変化(ログデータ)に、ブランドに対する意識変化(アンケートデータ)を掛け合わせ、両者にどのような相関性があったのか? をシングルソースにて分析しました。すると、非常に興味深い結果が出たのです。
[図3]は、 [広告接触者全体]に加えて[広告接触かつ広告配信開始後の新規検索者]のリフトアップまで可視化したグラフなのですが、すべての指標において[広告接触かつ広告配信開始後の新規検索者]のリフト値が大きく高まっていることがわかります。つまり、ニーズがまだ顕在化していないユーザーの行動を推進しマーケットを広げるためには、認知より深い“興味”や“検索/利用意向”などの“ミッドファネル指標”を高める施策が重要であると考えられます。
ただ、その指標を高めると言っても、動画広告であればどんなものでも高確率で高めることができるわけではありません。同じ“動画広告”というカテゴリひとつを取ってもさまざまなメディアがあり、その特性や利用目的に応じて多様な広告フォーマットが存在しているからです。
では、 それらの“ミッドファネル指標”を高めやすくするポイントはいったい何でしょうか?今回は「AbemaTV」というメディアの特性に紐づく形でそのヒントを探る検証を行いました。
先ほどご紹介した携帯キャリア案件における“ミッドファネル指標”のリフト効果を、さらに「AbemaTV」に対するユーザー評価別で分解したのが以下のグラフです。
③~⑥は【メディアやコンテンツの品質】に対する評価、⑦~⑧は【“視聴熱”が高まりやすいメディア構造】に対する評価、⑨~⑪は【ストレスを抑えた広告設計】に対する評価を「AbemaTV」に対して持っている[広告接触者]の数値です。ご覧のとおり、②の[広告接触者全体]に比べて、“「AbemaTV」になんらかの評価をしている[広告接触者]”のほうがすべての“ミッドファネル指標”においてリフト値が高いという結果となりました。
つまり、「AbemaTV」においては、以下の条件が“ミッドファネル指標”をリフトアップさせる要因になっていると言えます。
- ユーザーが安心してコンテンツを楽しめる、品質の高いメディアである。
- コンテンツの面白さとリニア同時視聴によって熱のこもった視聴体験を提供できる。
- 視聴体験に水を差さないよう配慮した形で動画広告に接触させることができる。
上記要素で構成された品質の高い“1インプレッション”の積み重ねは、「AbemaTV」がずっとこだわっている広告視聴体験であり、“ミッドファネル指標”を高めやすくする1つのヒントと言えるでしょう。
「AbemaTV」はどんな目的で広告出稿するのが最適なの? という問いを冒頭で書きましたが、品質の高い広告視聴体験にこだわり続ける「AbemaTV」は、動画広告の中でも「“ミッドファネル指標”を高めやすく、それがさらにその先の“ロウワーファネル(顕在層)”への移行を促し、マーケットを広げる」という役割を果たすことができるメディアだと考えます。
いかがでしたでしょうか?
広告マーケティングの話をする際、「大量認知獲得」や「刈り取り」におけるソリューションにまず力点が置かれるケースもありますが、改めてみなさんと一緒に“ミッドファネル”の重要性に対する意識を高めていきたいと考えています。また、「AbemaTV」がその役割においてさらに高い効果をあげるメディアになれるよう、質の高い接触体験を伴った広告プロダクトの開発とその価値証明に引き続きチャレンジしていきたいと思います。
調査機関:楽天インサイト株式会社
調査対象者:20-69歳男女
調査期間:2019年10月
サンプルサイズ:[検索ログ調査] 広告非接触者n=100,500、広告接触者n=11,009 [アンケート調査] 広告非接触者n=500、広告接触者n=500