LabAbemaTVに関するコラムや調査レポート

慶應大学と共同検証 ~広告ストレスの科学的計測から見えた“メディアがこだわるべき1インプレッションの価値”とは?

慶應大学と共同検証 ~広告ストレスの科学的計測から見えた“メディアがこだわるべき1インプレッションの価値”とは?
小島 功(こじま こう)

小島 功(こじま こう)

株式会社AbemaTV 広告本部 プロダクトマーケティングスペシャリスト

2003年にサイバーエージェントに入社し「アメブロ」のデザイン制作やマネタイズ業務などに携わる。2016年より「AbemaTV」の広告商品開発や価値証明を担当し、2019年より広報業務も兼任。

広告におけるブランド毀損リスクの本質的な課題のひとつとして「リスクだと捉える“レベル感”が、同じ広告業界の中であっても企業や人によって異なること」が挙げられるのではないでしょうか。広告を安全かつ質の高い場所に置くことができれば問題ないとする企業もあれば、ユーザーが強制感や違和感などによるストレスを感じにくい広告体験を求める人も存在します。

「AbemaTV」では広告を安全かつ質の高い場所に置くことはブランドセーフティ担保の点において“大前提”であると考え、開局当時からプロの手による質の高いコンテンツ制作を継続し、ブランド毀損のリスク排除に努めてきました。しかし、“広告効果を最大化する”という点を考えると場所がただ安全なだけでは不十分です。もともとユーザーが積極的に見たいわけではない広告をいかに強制感や違和感を与えず受け入れてもらえる工夫をするかが頭の使いどころですし、それがうまくいかないと、効果が上がらないだけでなく、別のブランド毀損リスクを孕んだものにすらなってしまう可能性があります。

「AbemaTV」はこれまでもユーザーのコンテンツ視聴体験を第一に考えながら、それに水を差さないよう配慮したフォーマットやタイミングで広告を編成するなど、“品質の高い1インプレッション”作りを目指して取り組んできましたが、果たしてこれらの施策はユーザーに受け入れられているのか─。

今回、それを感覚ではなく科学的に数値化してより良い広告体験の提供につなげたいという経緯から、生体信号解析の専門家としてご活躍されている慶應義塾大学理工学部の満倉靖恵(みつくらやすえ)教授にご協力をいただき、心拍の解析技術を活用してさまざまな広告接触パターンにおける心拍の変化を検証し、広告に対するストレスの大きさやその要因に関する共同研究を実施しました。プロ動画メディアの代表として「AbemaTV」のほか、いくつかのCGM型動画メディアもあわせて被験者に視聴してもらったため、その比較検証を通した研究成果をいくつかご紹介できればと思います。

<調査概要>

検証期間:2019年6~10月

検証場所:慶應義塾大学理工学部内

検証方法:「AbemaTV」と複数のCGM型動画メディアにてそれぞれ一定時間ずつ好きな動画コンテンツを視聴してもらい心拍を測定したほか、視聴後にはコンテンツや広告に対するアンケート調査を実施。比較・分析する指標は、内臓の働きや代謝、体温などの機能を維持しコントロールするための働きを持つ「自律神経系」を構成する「交感神経」と「副交感神経」の2つのバランスを表す「LF/HF」を採用。

▼本研究に関するプレスリリース
https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=23096

 

プレロール広告のストレスは“期待するコンテンツへの到達スピード”が影響?

まず動画コンテンツ本編前に流れる[プレロール広告]接触時のストレス値を接触メディアごとに比較したのが[図1]です。【心拍データ】【アンケート調査】の2種類のデータを掲載しています。

[図1]のとおり、【心拍データ】で表れたストレス値はCGM型動画メディア群のほうが高く、「AbemaTV」との差は“箸を使って30分間豆移動をした時”くらいのストレスの大きさに相当するものであることがわかりました。CGM型動画メディア群のほうがストレスが高い傾向は【アンケート調査】においても同じです。[プレロール広告]の接触タイミングが動画コンテンツ本編の前であることはいずれのメディアでも変わりがない中で、このようなストレスの大きさの差が【心拍データ】上でも【アンケート調査】上でも発生したのは何故なのでしょうか?

そのヒントの一端が、“接触した広告”に対する評価ではなく“視聴した動画コンテンツ”に対する評価の中に隠されていました。

今回の調査では、各メディアにおいて見たい動画コンテンツを被験者自身に自由に選択してもらい順番に視聴してもらったのですが、“視聴した動画コンテンツ”に対する評価【アンケート調査】で取得した結果が[図2]です。

ご覧のとおり、「期待通り」もしくは「面白かった」という評価を得たコンテンツ本数の割合が「AbemaTV」では全体の63.3%だったのに対し、CGM型動画メディア群ではわずか20.7%と、40%以上の差が開く結果となりました。さらに、CGM型動画メディア群におけるコンテンツ評価を“視聴本数順”にみてみると、視聴開始から2本目までの動画に対し「期待通り」もしくは「面白かった」という評価をした被験者は0名であり、そのような評価に値するコンテンツにたどり着くまでに平均5.8本の視聴を最終的に重ねているという実態がわかりました。

つまり、ユーザーに投稿されたコンテンツで構成されているCGM型動画メディアは、訪問ユーザーが目的に対し検索を重ねる中で、思ったような内容や品質の動画コンテンツになかなかたどり着きにくいケースがあり、そのような状況の中で[プレロール広告]に繰り返し接触することに強くストレスを感じている可能性があります。

ちなみに、[プレロール広告]に対する【心拍データ】のストレス値([図1])を、“動画コンテンツの視聴本数順”で分析したものが次の[図3]です。

興味深いのは、「AbemaTV」のストレス値が一定なのに対して、CGM型動画メディア群は1本目の動画コンテンツ視聴前に接触した[プレロール広告]からすでに値が高い傾向にある点です。CGM型動画メディア群においては、“「期待通り」あるいは「面白い」動画コンテンツに出会うまでにいくつかの広告を見なければいけない”というユーザーの日頃からの経験値が、広告に対するストレスを最初から高めている可能性を示唆するデータともいえます。

「AbemaTV」では、オンデマンド視聴機能である「Abemaビデオ」上のみで[プレロール広告]を展開していますが、ユーザーの期待を裏切らないような品質の高いコンテンツ提供はもちろん、目的に合ったコンテンツをストレスなく探せるようなUI改善を今後も継続することで、[プレロール広告]の“1インプレッションの価値”をさらに高めていきたいと考えます。

 

「AbemaTV」のこだわりがミッドロール広告に対するストレスを抑制

次に、動画コンテンツ本編中に流れる[ミッドロール広告]について見ていきましょう。

【アンケート調査】【心拍データ】の2種類の手法で取得した広告ストレス値を、“広告接触本数順”の推移でそれぞれ表したのが[図4]です。

まず左の【アンケート調査】の結果をみると、「AbemaTV」CGM型動画メディア群とはストレスの大きさと波形がほぼ同じです。一方、右の【心拍データ】の結果をみてみると、「AbemaTV」では1本目より2本目の広告接触のほうがストレス値が下がるのに対し、CGM型動画メディア群は1本目より2本目の接触のほうがストレス値が高まっており、左の【アンケート調査】のデータとは傾向がまったく異なることがわかります。

つまり、「AbemaTV」での[ミッドロール広告]は、接触回数を重ねても思っている以上にストレス値を抑制できていると推察できるとともに、ユーザーのコンテンツ視聴体験に水を差さないようタイミング配慮した広告設計がそれに寄与していることを示唆するデータと言えます。

意識上の調査だけでなく科学的な計測も取り入れながらデータを可視化することは、今回のような新たな発見を生み実態の把握を助ける可能性があります。ブランド棄損を招く可能性がある広告ストレスについては、そういったデータを総合的に見ながら、マーケター自身がブランド毀損リスクに対する判断基準をもつことが自社のブランドを守ることにつながるのではないでしょうか。

 

興味関心ターゲティングはブランド毀損リスクを防ぐ要(かなめ)ではない

意識上の【アンケート調査】【心拍データ】に差が生じたデータが他にもあります。

[図5]は、“広告内容に対する関心度”“広告に対するストレス”の2点について【アンケート調査】でヒアリングし、両者の相関性を表したものです。

ご覧のとおり、“内容に対する関心が高い広告ほどストレスを感じない”と意識上では答える傾向がみられました。

では、“広告に対するストレス”の値を【アンケート調査】データから【心拍データ】に置き換えてみるとどうなるでしょうか? [図6]をご覧ください。

“広告に対するストレス”の値【アンケート調査】データから【心拍データ】に置き換えてみると、どのメディアや広告の種類においても“広告内容に対する関心度”“広告に対するストレス”の間に相関性はみられなくなり、内容に対する関心が高い広告だからと言ってストレスが低いわけではない─ つまり、ユーザーの不快感は広告内容に対する関心の有無だけで決まるものではないということが実証されたデータです。

「興味関心に基づきターゲティング配信していれば、多少の強制感や違和感があっても大丈夫」という思い込みはブランド毀損リスクを高める可能性があるということを示唆しているように思います。

 

最後に

冒頭で、広告におけるブランド毀損リスクの本質的な課題は「リスクと捉える“レベル感”が、同じ広告業界の中であっても企業や人によって異なること」ことだと書きましたが、今回のような調査分析を各社が行うことで、今後のブランドセーフティ対策に関して広告業界全体が同じ“レベル感”で会話ができるようになり、またそこで講じる各対策の勝率アップにもつながります。

「AbemaTV」では今後も良質なユーザー接点を広告主様に提供できるよう、引き続き“品質の高い1インプレッション”に強くこだわっていくとともに、ブランドセーフティの本質を見極め提唱していく役割を果たせるメディアであり続けるよう努力していきたいと思います。

 

慶應義塾大学理工学部 満倉靖恵教授のコメント

慶應義塾大学理工学部
システムデザイン工学科
先端科学技術研究センター(KLL)副所長
満倉靖恵教授

私たちは日頃からさまざまなメディアで広告に接していますが、その接触の仕方によって広告に対するユーザーの感じ方に大きな差が出ていることが今回の調査でわかりました。

「AbemaTV」が実践する広告設計の取り組みにおいて心拍という生体情報を以ってストレス抑制効果が実証されたことは、ブランド毀損リスクの低減や広告効果の向上への道筋につながる1つの結果として価値があり、広告ビジネスの「価値向上」と「健全化」の両方を啓蒙し業界の発展に寄与できるメディアとして今後もさらに期待しています。

 

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